「よつば」です。
蚊取り線香じゃなくて、ぶたなんだな。
今回はADHDの「暴力衝動」に関することです。
ADHDと言っても人それぞれですので、暴力衝動と聞いてピンとこない人もいると思います。
ですが、よつばにとっては、ADHD症状の中では暴力衝動が最大の悩みでもありました。
それを相談するまでの道のりや、実際にもらった予想外のアドバイスなどを書いていきたいと思います。
この記事の目次
ADHDの暴力衝動
まず、このことについては少し触れておかなくてはいけません。
というのも、ADHDの人に、必ず「暴力衝動」というものがあるわけではないからです。
この記事を読んで「ADHDの人って怖いんだ」というような誤解をされては困りますので、先にお伝えしておきます。
これだけでは少し情報不足かなと思いますので、実体験の中から、「ADHDも人それぞれ」ということがわかりやすいと思う例を、一つあげておきますね。
よつばはADHDだけでなく、ASDも併発していると診断されています。
そして、よつばの親しい友人に、同じくADHDとASDを両方診断されたという人がいます。
学生時代からの友人で、お互い成人してから発達障害を診断されたため、この一致は偶然でした。
よつばは冒頭でも書いたように、暴力衝動が抑えられないことがあります。
普段から少し気が短いところがあり、人とのコミュニケーションもちょっととげとげしいと言われることもありました。
一方、よつばの親しい友人ですが、全く同じように発達障害を診断されていながら、性格はことごとく真逆のような人なのです。
怒っているところの想像ができないほどで、ケンカというケンカも起こりません。
よつばが不機嫌になって少々きついことを言ったとしても、彼はすぐに「ごめん」と謝り、心底申し訳なさそうにしょぼーんとしているような、そんな人です。
普段から人当たりがよく、ムードメーカーのような明るさも持っていました。
よつばが「陰」なら、彼は「陽」という感じで、本当に真逆の性質を持った人だと思っていましたね。
このことからもわかるとおり、発達障害だけで人の性格や症状が固定されてしまうわけではありません。
ADHD一つとっても、その人の生まれ育った環境や、個性までは変えられないので、症状の現れ方も人によって違います。
細かいところまで見れば、誰一人として「全く同じ症状」の人はいないというのがよつばの見解です。
少しでも引っかかる部分があれば、生活のヒントになることもあると思うので、ぜひ読んでいってください!
暴力は悩みが深い、でも相談しづらい
よつばは幼い頃から、発達障害に関わるような問題点をそれなりに抱えていました。
にも関わらず、自分に発達障害があるとはわからないまま過ごし、そのまま大人になってしまったのです。
そしてあるとき、人生で大きく躓き、その原因を探っていく過程で発達障害が診断されました。
よつばには、自分でも制御しきれないほどの暴力衝動があり、私生活で困ることも多々ありました。
しかし、それは今まで気をつけてはいたものの、「自分は短気な性格だから」と、半ば諦めていた部分でもあったのです。
諦めていた短所が、改善できるかもしれない……。
それは大きな希望であり、喜ばしいことではあったのですが、そこでふと思いました。
これがまだ未成年であるとか、ごく幼いうちであれば、自然に相談できたのかもしれません。
当時のよつばはもう25歳を過ぎており、自然には相談しづらい空気を、個人的には感じていました。
いい大人が「ついカッとなって物を破壊してしまう。暴れてしまう」などと、真面目に相談してよいものなのか……。
そんな声が聞こえるような気がしていました。
今にして思えば、ただの被害妄想でしかなかったと思いますが、当時は真剣に悩んだことの一つでした。
自分にとって深い悩みであるために、より一層、拒絶されるのが怖くなっていたのです。
もしもこの想像のように悩みを一蹴されたのだとしたら、よつばのガラスのハートは粉々に砕け散ったことでしょう。
真剣(まじ)です。
傷つくのが怖い……。
だから相談できない……。
でも常に困っている……。
解決策はない……。
そんな負のループに、よつばは迷い込んでしまっていたのでした。
相談するなら発達障害の専門医
よつばは、精神科と呼ばれる場所には10箇所近く通ったことがありますが、発達障害について相談するのであれば場所は選んだ方がいいと思っています。
というのも、よつばに発達障害があると発覚したとき、発達障害とは別の理由で精神科に通院していたのですが、そこの医師には「発達障害は治らないからどうしようもない」と言われ、「そういうものなのか」と納得してしまっていたのです。
しかしこれは大きな間違いです。
発達障害が治らないというのは確かなのですが、「どうしようもない」というのは完全に間違っています。
特にADHDは、薬物療法が有効であるケースがとても多く、改善の見込みはかなり高い確率であることが統計的にもわかっています。
これは少々残念なことですが、発達障害という分野は精神科にとっても特殊な分野のようで、精神科医であれば誰でも理解しているというわけではないのです。
ADHDに有効と言われている薬には、精神科医の中でも特別な資格を持っていないと処方することができないような薬もあるほどです。
このことからも、「精神科医であれば、必ず発達障害を診ることができるというわけではない」ということがわかるかと思います。
よつばが実際に相談した発達障害の専門医
よつばは生活に色々と困りごとを抱えていましたが、当時通っていた精神科ではなかなか生活に改善が見られませんでした。
発達障害に関する理解があまりない病院だったので、当然と言えば当然の結果だったのかもしれません。
やはり、発達障害に関わる部分と真剣に向き合わなければならないのではないかと思い、よつばは発達障害の専門医を探すことにしました。
なんでもかんでも自分で解決しようとせず、ときには人の力も借りることが大切ですよ!
さて、ここで見つかった発達障害の専門医というのが、少々変わった経歴を持つ人でした。
しかし、これが当時のよつばにとっては、よい方向に働いていたように思います。
- 専門医自身がADHDの当事者
- 内科的な事情で、ADHDの薬を服用することができない
- 薬が飲めないので、試行錯誤でADHDと向き合っている
- 2歳頃~成人にいたるまで、発達障害を専門に診ている
専門的な知識を持っているというだけでなく、当事者であるというところから、とても親近感がありました。
また、ADHDの中でも、よつばと同じように「暴力衝動」に悩み、向き合ってきたという話を聞かせてもらったのです。
そうしてよつばは、ぽつりぽつりと、自分のことを専門医に話すようになりました。
相談したら予想外の答えが返ってきた
よつばはまず、このようなことから相談し始めました。
こんな話、誰に言っても「それはよくないよ」とか、「物にあたらないように心がけよう」とか、はっきり言ってなんの解決にもならないような返事が返ってくると思っていました。
しかし、発達障害の専門医である先生は、よつばが全く想像すらしていなかったことを言い出したのです。
壊すものによっては、あとあと大変な後悔をする場合もありますから。
大体このようなことを言われたと記憶しています。
この記事を読んで、今、困惑している人もいると思うのですが、この返事ってすごくないですか?
先生が最初に提案したことの内容ですが、「物を壊すか壊さないか」という部分には一切触れていないんです。
「物は絶対壊す」と仮定したうえで、「そのうえでなにを壊すのか」という部分について提案してくれているんですね。
一見突拍子もない会話のように見えるのですが、当事者から見れば「物を壊さないようにしましょう」という意見の方が突拍子もない内容なんです。
なのでこれは、専門医であり当事者でもある先生だからこそできた、患者に最大限寄り添った提案だったように思えてなりません。
すごい提案であることは間違いないと思うのですが、当事者の方から見れば、「でもなぁ……」と小言を言いたくなった人もいるのではないでしょうか。
というのも、よつばはこの提案を受けて、真っ先に小言をぼやきました。
ダンボールって大きいから、常に横に置いておくことはできないし……。
ダンボールを破壊することが「名案だ!」と思った人もいると思うんですよ。
そういう人は是非、これを実践する方向で動いてみてほしいのですが、よつばはこんな風に思ってしまったんですね。
物を破壊するところまでいってしまうときは、半分くらいパニック状態になっているとも言えるので、なかなか冷静に判断できる自信がなかったんです。
小言を言っておきながら、よつばは「さすがに呆れられるのでは……」とちょっと思ったりしたのですが、先生はブレることなく代替案まで出してくれました。
これはこれで素晴らしい意見だとも思うので、「いいかも」と思った人は迷うことなく実践するべきだと思います。
しかし、よつばはここでも小言をぼやきました。
それに、ある程度は「壊して後悔するもの」の方が、抑止力になっていい気がします……。
記事を書きながら思ってしまいましたが、実に注文が多い厄介な患者ですね。
でも簡単には解決できないからこその悩みでもありますから、よつばと同じように感じた人もいるのではないかと思います。
これには先生も少し考えているようでした。
よつばはさすがにケチをつけすぎたかとひやひやしていましたが、先生は口を開きました。
うつむきがちだったよつばも、顔を持ち上げて先生の顔を見ました。
先生は、またしてもとんでもないことを言い出したのです。
発達障害専門医直伝の最終手段
なぜなら、これは私が実際にやったことだからです。
一般の人が聞けば、既に冗談のようなやり取りが繰り広げられているのですが、先生はこんな前置きをし始めました。
このときのよつばは、期待と不安の入り混じった、奇妙な表情をしていたに違いありません。
服をやぶいてください。
先生は確かにそう言いました。
それを受けてよつばは考えました。
服を、やぶく。
……。
……………。
意味がわからないと思った人もいるかもしれませんが、よつばはこのとき「大発明だ!!」というくらい感心しました。
よつばが先生にぶつけていた小言も、この意見の前には沈黙せざるを得ません。
さらに言えば、どこにあるか探す必要もありません。
なので消化不良にもなりにくいと思います。
着替えとかもないと思いますから。
この意見を聞いたとき、「先生は本物だ!」と確信しました。
まあ、偽物もなにもないとは思いますが……。
発達障害の専門医というだけではなく、これはADHDの当事者でもあるからこそ出てくる発想だと思うのです。
暴力衝動における最大の悩み
ADHDの「暴力衝動」における悩みで、最も困ることは「人を殴ってしまうのではないか」という部分です。
子どもの頃は実際に人を殴ったり、痛めつけることで衝動を解消していたことがあります。
教育で「人を殴ってはいけない」ということを教わり、歳をかさねていくことで落ち着きも手に入れ、だんだんと人に危害を加えることは減っていきました。
しかし、根本にある「暴力衝動」が消えることはないので、「人を殴ってしまいそうだ」と思ったとき、代わりに物にあたっていくようになっていってしまったのです。
このような経緯があるため、大人になってからも、「このままでは人に危害を加えてしまいそうだ」と思う場面は多々ありました。
そこに「壊せるものがない」という状況がかさなると、余計に危機感を覚えるのです。
もちろん、手当り次第に物を壊していいわけではありませんから、ある程度壊すことをためらうようなものがあるとベストだと思っていました。
そう思っていたよつばにとって、「服をやぶく」という言葉は革命的な一言でした。
最終最後、本当に自分を制御しきれないとき、どうにかぎりぎりでも「自分の服をやぶく」という選択をすることができれば、最悪の事態を回避できるのですから。
ADHDの暴力衝動を相談、さいごに
暴力衝動に悩んでおり、そしてこの記事を読んだ方は、きっと色々なことを思ったに違いありません。
というのも、「大発明」「革命的」とまで言っておきながら、よつばはいまだにこの「服をやぶく」という最終手段を使ったことがありません。
そんなにすぐ実行できる感じ、しませんよね。
肝心なのはまず、「このような手段もある、と知ること」だと思っています。
そして、「暴力衝動のコントロールができなくて困っている人はたくさんいる。自分だけじゃない、と知ること」も大切だと思うのです。
よつばはなにより、先生が「物を壊してはいけない」というようなことを一切言わなかった事実に、深く感動しました。
そんな風に思い、悩んでいたこともありました。
しかし、先生の対応が「そうではないよ」と言ってくれたような気がして、少し気持ちが軽くなっていったのです。
「そうではありませんよ」と直接言われるよりも、ずっと説得力のあるものだったように思えます。
なので、よつばと同じように悩んでいる人がいるのだとしたら、このことを最初に知ってほしいと思いました。
「暴力」というものはどこにいっても批難の対象になりますから、なかなか理解してもらうことができません。
そのため、このような悩みは人を苦しめます。
ただ、そのことに絶望する必要はないと思うのです。
工夫できることはきっとなにかありますから、よつばと一緒に前を向いて歩いてみませんか?
そんなことを思います。
余談
先生は研修医時代に、耐えきれなくなって自分の服をやぶいたと言っていました。
なかなか強烈なエピソードだと思います。
そんな先生ですが、よつばが診察に訪れたときには、歳をかさねていることもあってか、メモ帳をやぶくくらいで自分をコントロールすることに成功していると言っていました。
先生ほどの人でも、このような衝動が消えるようなことはないという現実に、少し残念に思う部分もありましたが、薬を飲めないハンデを背負っていながら、そこまでコントロールしている人がいるんだという部分では、とても励みになりました。
よつばも将来的には、メモ帳をやぶくくらいで自分をコントロールできればいいなと、一つの目標として考えています。
努力で暴力衝動を改善している大きな例でもあるので、希望とも言えると思います。
同じような悩みを持っている人が、一人でも多く救われるといいなと思っています。
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!